貧血
「最近めまいや立ちくらみが増えた」「階段で息切れする」「顔色が悪いとよく言われる」──そんな症状は、実は貧血が原因かもしれません。
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が少なくなり、全身に十分な酸素が行き渡らなくなる状態です。特に女性や高齢者に多く、体のだるさや集中力の低下だけでなく、心臓に負担がかかるケースもあります。ここでは、貧血の原因や症状、治療法についてご紹介します。
貧血の症状について
貧血の症状は、ヘモグロビンが低下することで、血液が運搬できる酸素の量が低下し、体に十分な酸素を運べないことで起こります。以下のような症状がある場合、貧血を疑います。
-
立ちくらみ・めまい
-
動悸・息切れ
-
顔色が青白い
-
倦怠感・だるさ
-
頭痛・集中力の低下
-
爪が割れやすい、抜け毛が増えた
-
舌の違和感・のどの詰まり感
-
寝ても疲れがとれない
症状が進行していても「年齢のせい」「疲れているだけ」と思って見過ごされることもありますが、血液検査をすればすぐにわかります。日本人女性の約10〜20%が貧血とされており、特に月経のある年代では鉄欠乏性貧血が多く見られます。高齢者では、消化管出血や腫瘍などが原因となることもあります。
貧血の方に特徴的な所見として診察では以下の項目も確認します。
舌の痛みや光沢(ハンター舌炎):悪性貧血に特徴的
爪の変形(匙状爪):鉄欠乏性貧血に多い
黄疸:溶血性貧血の可能性
リンパ節腫脹・脾腫:白血病やリンパ腫の可能性
貧血の原因について
貧血にはいくつかの種類があり、原因もさまざまです。
-
鉄欠乏性貧血
最も多いタイプで、女性に多くみられます。月経や妊娠・出産、食事からの鉄分不足、胃腸からの出血が原因になることもあります。 -
慢性疾患による貧血
糖尿病や腎臓病、関節リウマチなどの炎症、がんなどの慢性疾患によって起こるタイプです。高齢の方に多く、気づかれにくいこともあります。 -
ビタミンB12欠乏・葉酸欠乏
偏食や胃の手術後や高齢者で多く見られます。ビタミンB12欠乏では舌の痛みや神経症状が出ることがあります。 -
溶血性貧血・再生不良性貧血
赤血球自体に異常を認めたり、自己免疫で赤血球が破壊される疾患があります。 -
造血障害
骨髄の機能低下により、赤血球の産生能力が低下します。再生不良性貧血や白血病などで見られます。
当院では、各種検査や診察所見で原因を診断し、治療を行ってまいります。状況によって必要があれば消化器内科への紹介、血液内科への紹介を行っております。
貧血の病気の種類について
貧血は症状だけでなく、「何が原因で起きているか」によって種類が分類されます。治療方針も異なりますので、まずは正確な診断が大切です。
| 貧血の種類 | 主な原因 | 主な治療法 |
|---|---|---|
| 鉄欠乏性貧血 | 月経、偏食、出血 | 鉄剤の内服または注射 |
| ビタミンB12欠乏性貧血 | 胃切除、吸収不良 | ビタミンB12の補充 |
| 慢性疾患性貧血 | 腎不全、がんなど | 原因疾患の治療、造血ホルモン |
| 再生不良性貧血 | 骨髄の機能低下 | 専門医との連携治療 |
貧血の治療の進み方
1. 血液検査で原因を明確に
-
ヘモグロビン値
-
フェリチン(貯蔵鉄)
-
鉄・ビタミンB12・葉酸
-
白血球・血小板数 など
これらを総合的に見ることで、貧血の原因と種類が判断できます。貧血の治療は、原因に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
2.貧血の原因による治療法の選択
- 鉄欠乏性貧血:
- 経口鉄剤の投与(副作用がある場合は静注)
- 原因となる出血の精査(便検査や他院での消化管内視鏡など)
- ビタミンB12・葉酸欠乏性貧血:
- ビタミン補充(吸収障害がある場合は注射)
- 溶血性貧血:
- 原因疾患の治療(免疫抑制剤、ステロイドなど)
- 重症例では輸血や血漿交換療法
- 腎性貧血:
- エリスロポエチン製剤の投与
- 再生不良性貧血・骨髄異形成症候群:
造血幹細胞移植や免疫抑制療法など、専門的治療が必要
3. 貧血に対する食事指導
-
鉄分の多い食品:レバー、赤身肉、しじみ、ほうれん草、小松菜
-
ビタミンCの摂取:鉄の吸収を助ける
-
バランスの取れた食事を続けることが大切です
4. 必要に応じて専門医紹介
-
消化管出血が疑われる場合、胃カメラや大腸カメラの検査を提案
-
難治性・再発性の貧血では、血液内科や消化器内科と連携します
貧血についてのよくある質問
Q1. 貧血は放っておくとどうなりますか?
A1. 進行すると、日常生活に支障をきたすほか、心臓への負担が増えて動悸や息切れ、心不全を引き起こす可能性もあります。
Q2. 鉄剤を飲むとお腹が痛くなったり便が黒くなるのは大丈夫ですか?
A2. 一部の鉄剤で胃の不調が出ることがありますが、製剤を変更することで改善されることが多いです。便が黒くなるのは正常な反応です。
Q3. 健診で「軽度の貧血」と言われましたが受診した方がいいですか?
A3. はい。軽度でも継続しているようであれば、一度詳しい検査を受けることをおすすめします。大きな病気のサインであることもあります。
Q4. 貧血は治りますか?
A4. 鉄欠乏性貧血などは、原因を改善すれば治療可能です。ただし、繰り返す方は生活習慣や以下の様な他の疾患のチェックも重要です。
慢性炎症性疾患(例:結核、H. pylori感染)では、鉄の利用障害が起こり、貧血を引き起こすことがあります。
H. pylori(ピロリ菌)感染は、胃粘膜の萎縮を通じて鉄吸収障害を起こし、鉄欠乏性貧血の一因となることが報告されています。
寄生虫感染(例:鉤虫)では、腸管からの慢性的な出血により鉄欠乏性貧血を引き起こすことがあります。
ウイルス感染(例:パルボウイルスB19)は、一時的に赤血球の産生を抑制し、溶血性貧血患者で重篤な貧血を引き起こすことがあります。
最後に
貧血は「女性に多いから仕方ない」「忙しくて疲れているから」と我慢されがちな症状ですが、実は心臓や血管のトラブルにもつながることがある大切なサインです。当院では血液検査による早期発見と、それぞれの原因に合わせた治療を行っています。症状がある方はもちろん、健診で貧血を指摘された方も、ぜひ一度ご相談ください。
