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脂質異常症

脂質異常症は、動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めてしまう生活習慣病の一つです。高脂血症とも呼ばれています。ここでは、日本動脈硬化学会のガイドラインや最新の疫学データをもとに、脂質異常症の基本的な知識、原因、予防法について詳しく解説します。


1. 脂質異常症とは?

脂質異常症は、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が正常範囲を超えている状態を指します。日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」に以下の基準が示されています。

指標 診断基準 (mg/dL)
LDLコレステロール(悪玉) 140以上
HDLコレステロール(善玉) 40未満
中性脂肪(TG) 150以上

日本国内では、成人の約40%が脂質異常症を抱えていると推定されており、特に40歳以上の男性閉経後の女性で発症率が高いことが報告されています。


2. 脂質異常症の原因とリスク要因

脂質異常症の主な原因は、生活習慣遺伝的要因の組み合わせによるものです。代表的なリスク要因には以下のようなものがあります:

  • 食生活の乱れ:飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取がLDLコレステロールを増加させる。
  • 運動不足:適度な運動を行わないと、HDLコレステロールが低下し、脂質代謝が悪化する。
  • 肥満:内臓脂肪が増えると、脂質異常症のリスクが高まる。
  • 遺伝的要因:家族性高コレステロール血症(FH)は遺伝的にLDLコレステロールが高くなる疾患で、早期の治療が必要。

 

※脂肪酸とは?

脂肪酸は油や脂肪の成分の一つで、体のエネルギー源になったり、細胞を作る材料になったりします。脂肪酸は大きく分けて「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」の2種類があります。

飽和脂肪酸とは?

飽和脂肪酸は、肉や乳製品に多く含まれる脂肪酸です。バターやラードなどに多く含まれています。飽和脂肪酸は、常温で固まりやすい性質を持っています。飽和脂肪酸はエネルギー源になり、体を動かすための燃料になりますが、飽和脂肪酸を多く摂りすぎると、血管が硬くなり、動脈硬化の原因になることがあります。

不飽和脂肪酸とは?

不飽和脂肪酸は、魚や植物油に多く含まれる脂肪酸です。例えば、オリーブオイルや青魚(サバ、イワシなど)に多く含まれています。不飽和脂肪酸は、常温で液体の状態を保つ性質があります。

不飽和脂肪酸の種類

不飽和脂肪酸には、「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」があります。

  1. 一価不飽和脂肪酸(オメガ9系)

    • オレイン酸(オリーブオイル、アボカドに含まれる)
    • 血管を健康に保つ働きがある
  2. 多価不飽和脂肪酸

    • オメガ3系(EPA・DHA)(青魚に含まれる)
    • オメガ6系(リノール酸)(大豆油、コーン油に含まれる)
    • 脳の働きを助けたり、血液をサラサラにする効果がある

3. 脂質異常症がもたらす健康リスク

脂質異常症は、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの深刻な疾患の原因となります。疫学研究によると、LDLコレステロール値が160 mg/dL以上の人は、心血管疾患の発症リスクが2倍以上に増加することが報告されています。


4. 脂質異常症の予防と治療法

脂質異常症の予防には、生活習慣の改善薬物療法の組み合わせが重要です。

生活習慣の改善

  • 食事の見直し:揚げ物などの脂っこい食事を控えるなど、脂質の過剰摂取に注意をすることが必要です。また、青魚などを中心とした食事を行うことで、飽和脂肪酸を減らし、オメガ3脂肪酸を増やすことにつながり動脈硬化の予防に効果があると考えられます。
  • 適度な運動:週150分以上の有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)が推奨されます。
  • 禁煙・節酒:喫煙はHDLコレステロールを低下させるため、禁煙が推奨されます。

薬物療法

日本動脈硬化学会のガイドラインでは、以下の薬剤が推奨されています

  • スタチン:LDLコレステロールを低下させる。
  • フィブラート系薬:中性脂肪を低下させる。
  • PCSK9阻害薬:重症例に使用される新しい治療薬。

    ※PCSK9(ピーシーエスケーナイン)は、体の中でコレステロールの量を調整するタンパク質です。特に「悪玉コレステロール(LDLコレステロール)」の量を増やす働きがあります。肝臓には、血液中のLDLコレステロールを回収する「LDL受容体」というものがあります。PCSK9はこのLDL受容体を壊してしまうため、LDLコレステロールが血液中に増えてしまいます。

    PCSK9阻害薬とは?
    PCSK9の働きを抑える薬(PCSK9阻害薬)を使うと、LDL受容体が壊されずに残るため、血液中のLDLコレステロールを減らすことができます。これにより、動脈硬化や心臓病のリスクを下げることができます。PCSK9は、コレステロールの管理に関わる重要なタンパク質なので、最近の医学研究でも注目されています。


脂質異常症は、適切な管理によって予防・改善できる疾患です。健康的な生活習慣を維持し、定期的な検査を受けましょう。運動などの生活習慣の改善だけでは改善しない場合もありますので、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを減らすためにも適切な薬物療法を検討することも重要です。

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