硬化療法とは?
フォーム硬化療法
蜘蛛の巣状静脈瘤(C1)の“注射の治療”です
「細い血管がクモの巣のように広がって見える」「網目状に見える」――このタイプ(CEAP分類 C1)は、レーザー治療の対象になる“太い本幹”とは違い、フォーム硬化療法が中心となる治療です。
欧州の硬化療法ガイドラインでも、C1に対してフォーム硬化療法が治療選択肢になることが明記されています。当院では、治療前にアレルギーや色素沈着などを含めて十分にご説明し、ご同意が得られた方に行っております。
1) フォーム硬化療法とは何か
フォーム硬化療法は、硬化剤(日本では主にポリドカノール)を泡(フォーム)にして静脈瘤へ注入し、その血管を閉塞 → 線維化(細い“索状”に変化)させて、目立ちにくくしていく治療です。日本のガイドラインでも、硬化療法は「薬剤で血管内皮を障害し、血栓化して閉塞させる治療」と位置付けられています。
2) フォームの作り方:Tessari法
当院で用いるフォームは、国際的に標準化された方法のひとつである Tessari法(三方活栓+シリンジ2本)で作成します。欧州ガイドラインでは、フォームの作成法としてTessari法が推奨されています。
作り方
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シリンジ2本を三方活栓(またはコネクタ)で接続
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片方に硬化剤(液体)、もう片方に空気を入れます
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シリンジを往復させて、細かく均一な泡を作ります(“タービュレントミキシング”)
混合比(重要)
硬化剤:空気= 1:4 〜 1:5(例:硬化剤1に対して空気4〜5)
作ったらすぐ注入
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フォームは時間とともに性状が変わるため、作成から注入までの時間はできるだけ短くすることが推奨されています。
1回のフォーム量
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1回あたり最大10 mLを超えないように、必要最小限で行うことが推奨されています(個別のリスク評価で増量を検討する場合があります)。
3) 実際の手順
① 診察・マーキング
立った状態で静脈瘤の広がりを確認し、必要に応じてエコーで血管の走りを確認します。
C1は見える血管への治療が中心ですが、背景に別の逆流が疑われる場合は、治療方針が変わることがあるためです。
② 消毒・穿刺
細い針で静脈瘤を穿刺し、フォームをゆっくり注入します。
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C1の細い血管:目で見える範囲を中心に、少量ずつ丁寧に注入
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必要に応じて:エコーで位置を確認しながら注入(安全のため)
③ 圧迫
圧迫はかなり重要な過程になります。注入後は、治療した血管が「閉じたまま」になりやすいように、弾性ストッキングや包帯で圧迫します。欧州ガイドラインでも、硬化療法後に圧迫療法を用いることが推奨事項として整理されています。
④ 安静は不要です。
治療後は、可能な範囲で早めに歩いていただきます。血栓症リスクを下げるためにも大切です。
⑤ 次回来院時のフォロー
硬化療法後に、治療した血管の中に小さな血の塊(coagulum)が残ると、色素沈着の原因になることがあります。欧州ガイドラインでは、色素沈着リスクを減らす目的で、表在の血栓(しこり)を針で除去することが推奨されています。
4) 受けられない方(禁忌)・注意が必要な方
安全のため、次に当てはまる場合は原則として行いません。
絶対禁忌
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硬化剤アレルギー
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急性の深部静脈血栓症(DVT)/肺塞栓症(PE)
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注射部位の感染、または重い全身感染
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長期臥床などで動けない状態
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フォームの場合:症候性の右左シャント(例:症候性PFOなど)
相対禁忌(個別に利益とリスクを比べて判断します)
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妊娠中
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授乳中(一定期間の中断が推奨される整理があります)
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重症の末梢動脈疾患(PAD)
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血栓症リスクが高い状態(既往、重い血栓性素因、活動性がん など)
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以前のフォーム硬化療法で片頭痛などの神経症状が出た方
※抗凝固薬の内服そのものは「禁忌ではない」と整理されていますが、出血や皮下出血の出方なども含め、当院では必ず個別に安全性を確認します。
5) 合併症
C1のフォーム硬化療法で比較的多いのは、次のようなものです。
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注射部位の赤み・痛み・腫れ
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一時的なしこり(硬結)
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色素沈着(茶色っぽくなる:数週〜数か月で薄くなることが多い)
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マッティング(細い血管が増えたように見える変化)
まれですが重要なものとして、血栓症(DVT/PE)や、フォームに関連した一過性症状(視覚症状など)が知られています。フォーム量が多いほど一過性症状などが増える可能性があるため、必要最小限のフォーム量で行うことが推奨されています。
6) 「本幹(伏在静脈)」に施行するフォーム硬化療法
当院の基本方針として、本幹逆流がある場合はレーザー等が中心ですが、海外ガイドラインでは本幹に対するフォーム硬化療法が条件付きで検討される症例が提示されています。
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European Society for Vascular Surgery(ESVS)2022 慢性静脈疾患ガイドラインの治療フローチャートでは、超音波ガイド下フォーム硬化療法(UGFS)は「GSV径<6mmの場合に限る」という注記が明示されています。
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NICE(英国)CG168では、endothermal ablation(レーザー/高周波)が不適なら超音波ガイド下フォーム硬化療法、それも不適なら手術という順序が示されています。
「本幹にフォームを使うかどうか」は、血管径や解剖、患者さんの状況を踏まえて選ぶ位置づけです。
受診の目安
「クモの巣状に見える」「網目状に見える」「見た目が気になる」――そのお悩みは、フォーム硬化療法で改善が期待できます。まずは診察で、あなたの静脈瘤がC1としてフォーム硬化療法が最適か、あるいは背景に別の逆流がないかを確認し、治療の見通し(回数・起こりうる変化)を分かりやすくお伝えします
