メニュー

気管支喘息

気管支喘息

呼吸器の慢性炎症疾患である気管支喘息は、日本国内で子どもから高齢者まで幅広い年代にみられ、自覚症状の変動を繰り返すのが特徴です。日本呼吸器学会・日本アレルギー学会合同の「喘息治療ガイドライン2020」では、「気道の慢性炎症をコントロールし、症状のない生活をめざす」ことが治療目標と定められています。ここでは、最新の疫学データやガイドラインをもとに、喘息の基礎知識から診断・治療、予防までをわかりやすく解説します。


1. 気管支喘息とは?~病態と主な症状~

喘息は、気管支(気道)が慢性的に炎症を起こして敏感になり、さまざまなきっかけで気道が急に狭くなる疾患です。アレルゲンや刺激物が気道内に侵入すると、まず上皮細胞や樹状細胞が抗原を取り込み、CD4⁺T細胞のうちTh2細胞へと分化を誘導します。Th2細胞はサイトカイン(IL-4, IL-5, IL-13)を分泌し、B細胞にIgE産生を促すほか、好酸球の動員・活性化を引き起こします。肥満細胞からはヒスタミン、トロンボキサンA₂、プロスタグランジンD₂、ロイコトリエンなどのケミカルメディエーターが放出され、気管支平滑筋収縮、血管透過性亢進、粘液分泌増加をもたらします。これが数分以内に生じる「発作」です。
その後、好酸球や好中球によって遅発相反応(late-phase reaction)が起こります。好酸球から放出される諸物質により、上皮細胞を傷害し、二次的に炎症を増悪させます。
慢性炎症が持続すると、繰り返しの損傷‐修復過程を通じて気道リモデリングが進行します。具体的には上皮下基底膜の線維化、平滑筋の肥大・肥厚、杯細胞(粘液産生細胞)の過形成がみられ、これが気道過敏性や慢性の気流制限を助長します。

  • 発作的に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音を伴い、胸部圧迫感や呼吸苦を感じます。
  • 夜間~早朝に症状が悪化しやすく、日常生活や睡眠の質を低下させます。
  • ガイドラインでは「症状がない日を増やし、発作を未然に防ぐ」ことが最重要とされています。

2. 喘息のリスクとかかる疾患の割合

【国内外の有病率】

  • 成人の有症状喘息(1年以内に発作や夜間覚醒を経験した人)の割合は約7.5%と推定されます。
  • 年齢別では、15~64歳で4.7~6.7%、65歳以上で8.8~10.9%と高齢者で増加傾向にあります。
  • 小児期は思春期頃まで80%が自然軽快しますが、30%は成人発症へ移行するとされます。

【リスク要因】

  • アレルギー素因(花粉・ダニ・ペットのフケなど)
  • 喫煙や受動喫煙
  • 大気汚染、職業性粉じん
  • 肥満、ストレス、風邪など感染症
  • 家族歴(親兄弟に喘息やアトピー疾患がある)

これらが複数重なることで発症・重症化リスクが高まるため、リスクの把握と対策が大切です。


3. 診断と治療の流れ~ガイドラインに沿ったステップ療法~

【診断】

  • 問診・聴診・胸部X線で基礎評価後、スパイロメトリー(肺機能検査)で可逆性のある気流制限を確認します。
  • ピークフロー(PEF)日誌をつけ、日内変動を評価することも推奨されます。

【治療のステップ】

日本喘息ガイドライン2020では、症状と肺機能に応じてStep 1~4の段階的治療を行います。

  1. Step 1(間欠型):発作時のみ短時間作用型β2刺激薬(SABA)を吸入
  2. Step 2(軽度持続型):低用量吸入ステロイド薬(ICS)を毎日継続
  3. Step 3(中等度持続型):ICS+長時間作用型β2刺激薬(LABA)併用
  4. Step 4(重症持続型):高用量ICS/LABA併用+ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)や抗IgE抗体など生物学的製剤を検討

治療ステップは「症状がコントロールできる最小量」をめざして調整し、定期的に見直します。


4. 予防と日常生活の工夫

【トリガー回避】

  • アレルゲン対策(ダニ対策カバー、掃除機かけ)
  • 室内換気、空気清浄機の活用
  • 喫煙は厳禁。二次喫煙も避ける。

【セルフモニタリング】

  • PEFを毎朝・毎晩測定し、ガイド値との乖離で早期受診
  • 発作予兆(咳の増加、胸苦しさ、夜間覚醒)を見逃さない

【定期受診と服薬アドヒアランス】

  • 定期的に呼吸機能を検査し、治療効果を評価
  • 吸入薬は「正しい吸入法」が効果の鍵。器具の洗浄も忘れずに

【生活習慣の整備】

  • 適度な運動(ウォーキング、ヨガなど)で呼吸筋を強化
  • バランスのよい食事、十分な睡眠、ストレス管理

気管支喘息はガイドラインに基づく適切な治療とセルフケアで「発作のない日常」を得られる疾患です。当クリニックでは、内科開業医レベルでの対応が可能です。吸入の継続や日常生活習慣の指導などを行うことが可能ですが、詳細な評価や診断については呼吸器内科専門医の受診も必要になる可能性がありますので、その際は適切な医療機関を紹介いたします。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME