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慢性腎臓病

1. 慢性腎臓病(CKD)の原因と疫学

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、腎臓の機能が徐々に低下していく病気で、進行すると透析や腎移植が必要になることもあります。日本では成人の約7〜8人に1人(約1,480万人)がCKDと推定されており、特に年齢があがるほど有病率が高くなっていきます。

CKDの主な原因は以下の通りです:

  • 糖尿病性腎臓病(DKD):最多の原因で、透析導入の約40%を占めます
  • 高血圧性腎硬化症:長年の高血圧により腎臓の血管が障害され発症
  • 糸球体腎炎:IgA腎症など、腎臓のフィルター部分の炎症により発症
  • 多発性嚢胞腎などの遺伝性疾患
  • 加齢や生活習慣病の影響

このように生活習慣病の影響も大きく、これらの適切な管理や定期的な健診によって、CKDの発症や進行を予防することが可能です。当院では循環器専門医の視点から、心臓と深く関わる「腎臓の健康」にも注目し、早期発見・早期治療を重視しています。血液検査や尿検査などで異常を指摘された方はお気軽にご相談ください。

2.慢性腎臓病の症状について

腎臓病は沈黙の病気とも呼ばれ、初期にはほとんど症状がありません。進行するにつれて、以下のような症状が現れることがあります:

  • 夜間頻尿や足のむくみ
  • 倦怠感、疲れやすさ
  • 食欲不振、吐き気、口内炎
  • かゆみや筋肉のけいれん
  • 貧血による息切れや集中力低下
  • 蛋白尿や血尿

症状が出る頃には腎機能が低下していることが多く、血液検査や尿検査による早期発見が重要です。

慢性腎臓病(CKD)の病気のステージについて

CKDの診断は以下のいずれか、または両方が3か月以上持続することで確定されます:

  • 糸球体濾過量(eGFR)<60 mL/分/1.73m²
  • 蛋白尿やアルブミン尿の持続的な存在

CKDのステージ分類は大きく次のようになります

ステージ GFR(糸球体濾過量)の目安 腎機能の状態
G1 90以上 正常~軽度低下
G2 60~89 軽度低下
G3a 45~59 中等度低下
G3b 30~44 中等度低下(進行)
G4 15~29 高度低下
G5 15未満 腎不全(透析が必要になる状態)

CKDは進行度に応じてG1〜G5の5段階に分類され、G5は末期腎不全(透析が必要な状態)に相当します。さらに、尿中アルブミン量(A1〜A3)と組み合わせて重症度を評価します。CKDは数年~数十年かけて進行していきます。ステージが上がる前に、しっかりとした生活管理と治療が必要です。また、CKDは心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを高めることも知られており、全身の健康に関わる重要な疾患です。

 

慢性腎臓病の治療法について

当院では、以下のような治療アプローチを行っています:

  • 原因疾患(糖尿病・高血圧など)のコントロール
     腎機能を守るためには、まずその背景にある生活習慣病を管理することが重要です。

  • 塩分制限・食事指導
     1日の塩分摂取量を6g未満にすることで、腎臓への負担を軽くします。管理栄養士と連携し、丁寧にご説明いたします。

  • 定期的な血液・尿検査、心機能との連携評価
     当院では心臓エコーや心電図など循環器の検査設備が整っており、心腎連関(心臓と腎臓の相互影響)を意識した包括的な管理が可能です。

  • SGLT2阻害薬、ARBによる治療

    元々、腎臓に対しては高血圧の治療薬である、ARB(Angiotensin Receptor Blocker:アンジオテンシンII受容体拮抗薬)が中心でした。しかし近年では、これに加えて、SGLT2阻害薬(例:ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)がCKD治療において注目されています。元々は糖尿病治療薬として開発されましたが、糖尿病の有無にかかわらず腎保護効果があることが大規模臨床試験で示され、慢性腎臓病の進行抑制に用いられております。

    SGLT2阻害薬の主な効果:

    • 糸球体内圧の低下による腎機能保護
    • 蛋白尿の減少
    • 心不全や心血管イベントの抑制
    • 体重や血圧の改善

    ただし、eGFRが15未満では新規投与は推奨されないなど、使用には一定の条件があります。
    医師の判断のもと、適切に使用されることが重要です。

慢性腎臓病についてのよくある質問

Q1. どんな検査をすればCKDが分かりますか?
A1. 主に尿検査(たんぱく尿)、血液検査(クレアチニンやeGFR)で腎機能を評価します。j腎臓と心臓は非常に関連のある臓器で、心不全の除外などを目的に、当院では必要に応じて心エコーなどもあわせて行います。

Q2. CKDは治りますか?
A2. 一度低下した腎機能が元に戻ることは難しいですが、適切な治療を続けることで進行を止めたり遅らせたりすることが可能です。

Q3. 透析になるかどうかが不安です。
A3. 透析が必要になる前に、血圧管理や食事、薬物治療で進行を抑えることが重要です。定期的に通院していただければ、早めの対応が可能です。

腎臓を守るためにできること

CKDは早期発見・早期治療がカギとなる病気です。健康診断での尿検査や血液検査を活用し、生活習慣を見直すことが予防につながります。また、近年はSGLT2阻害薬をはじめとする新しい治療選択肢も登場し、透析を回避できる可能性も広がっています。腎臓の健康を守ることは、血管の健康を守ること、つまり、全身臓器の健康を守り、心臓病や脳卒中のリスクの軽減にもつながります。気になる症状がある方や、糖尿病・高血圧などの持病がある方は、ぜひ一度ご相談ください。当院では、循環器専門医としての視点から、腎臓の病気にも早期からしっかり向き合い、生活習慣病との関わりも含めて総合的に診察しています。「健診でクレアチニンが高いと言われた」「尿検査で再検査になった」といった段階から、どうぞ気軽にご相談ください。

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