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慢性腎臓病

慢性腎臓病(CKD)

健診で「クレアチニンが高い」「eGFRが低い」「尿たんぱくが出た」と言われた方へ

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、腎臓の働きが低下している状態、または尿たんぱく・尿アルブミン・血尿など腎障害のサインが3か月以上続く状態を指します。腎臓の病気というと特別なものに思われるかもしれませんが、CKDは決して珍しくありません。日本腎臓学会では、慢性腎臓病は成人の約5‐6人に1人ともいわれており、年齢とともに増えやすいことが知られています。さらに現在のCKD診療では、腎機能だけでなく、原因、GFR、尿アルブミンを組み合わせて評価する考え方が基本です。

CKDが大切なのは、進行すると透析や腎移植が必要になる可能性があるだけでなく、心不全、心筋梗塞、脳卒中などの心血管病のリスクも高めるためです。しかも、初期にはほとんど症状がないことが多く、健診で初めて見つかることも少なくありません。したがって、症状が出る前に見つけて、進行を抑えることがとても重要です。


CKDとはどんな病気か

腎臓の役割

腎臓は、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として出すだけでなく、体内の塩分や水分のバランスを整え、血圧の調整を助け、赤血球を作る働きにも関係しています。そのため腎機能が低下すると、むくみ、血圧上昇、貧血、だるさなど、全身にさまざまな影響が出てきます。

CKDの主な原因

CKDの原因として多いのは、糖尿病関連腎臓病高血圧による腎障害(腎硬化症)糸球体腎炎加齢多発性嚢胞腎などの遺伝性疾患、そして一部の薬剤による腎障害です。とくに糖尿病や高血圧は、腎臓を傷める大きな原因であり、日常診療で最もよくみられます。糖尿病では、eGFRがまだ保たれていても、先に尿アルブミンが増えることがあるため、血液検査だけでなく尿検査が重要です。


CKDの症状

CKDは「沈黙の病気」ともいわれ、初期には自覚症状が乏しいのが特徴です。かなり進行してから、次のような症状がみられることがあります。

  • 足や顔のむくみ
  • 夜間尿が増える
  • だるさ、疲れやすさ
  • 食欲低下、吐き気
  • 息切れ
  • かゆみ
  • 貧血
  • 血圧が高くなる

こうした症状が出る頃には、すでに腎機能がかなり低下していることもあります。症状がない段階で異常を拾うことが、CKD診療では非常に大切です。


CKDはどのように診断するのか

血液検査と尿検査が必要です

CKDの診断では、血清クレアチニンやeGFRに加えて、尿たんぱく・尿アルブミンを確認することが大切です。KDIGO 2024では、CKDは3か月以上続く腎構造または機能の異常と定義され、評価はCGA分類(Cause・GFR・Albuminuria)で行うとされています。つまり、eGFRが比較的保たれていても、尿アルブミンが多ければCKDと判断されることがあります。

表1 CKDの重症度の見方

項目 区分 目安 意味
GFR区分 G1 90以上 正常または高値
  G2 60〜89 軽度低下
  G3a 45〜59 軽度〜中等度低下
  G3b 30〜44 中等度〜高度低下
  G4 15〜29 高度低下
  G5 15未満 腎不全
アルブミン尿区分 A1 30 mg/gCr未満 正常〜軽度増加
  A2 30〜299 mg/gCr 中等度増加
  A3 300 mg/gCr以上 高度増加

G1やG2でも、尿アルブミンや尿たんぱくがあればCKDに該当することがあります。 逆に、eGFRだけを見て「まだ大丈夫」と判断しないことが重要です。

糖尿病がある方では尿アルブミンが重要

糖尿病関連腎臓病では、尿中アルブミン排泄の増加は腎機能低下のリスクになります。日本糖尿病学会のガイドラインでも、UACR(尿アルブミン/Cr比)を用いて、30〜299 mg/gCrを微量アルブミン尿、300 mg/gCr以上を顕性アルブミン尿として評価することが示されています。


CKD治療の基本方針

治療の目標

CKD治療の目標は、一度低下した腎機能を完全に元に戻すことよりも、これ以上悪くしないこと、そして心血管病を予防することです。早期から治療を始めることで、進行を遅らせられる可能性があります。

血圧・血糖・生活習慣の管理

CKDでは、高血圧の管理糖尿病の管理塩分制限禁煙体重管理が基本になります。塩分の摂りすぎは血圧上昇やむくみ、蛋白尿増加につながるため、一般には食塩6g/日未満が目安です。糖尿病がある方では、血糖コントロールに加えて、尿アルブミンの変化を追いながら腎保護治療を組み合わせていきます。

尿蛋白・尿アルブミンがある方では薬物治療が重要です

尿アルブミンが増えているCKDでは、ACE阻害薬やARBが重要な治療の柱とされています。特に糖尿病がありA2〜A3のアルブミン尿を伴う場合には、ACE阻害薬またはARBの使用が推奨されています。開始後は、血圧、クレアチニン、カリウムを2〜4週間で確認することが推奨されています。


CKDで使われる主なお薬

表2 CKDでよく用いられる主な治療薬

薬の種類 主な役割 どんな方で検討されるか 注意点
ACE阻害薬 / ARB 糸球体内圧を下げ、尿蛋白・尿アルブミンを減らし、腎臓を守る 高血圧がある方、尿蛋白・尿アルブミンがある方 開始後にクレアチニンやカリウムが変化することがある
SGLT2阻害薬 腎保護、心不全予防、蛋白尿減少 糖尿病合併CKD、または蛋白尿を伴うCKDなど 脱水、食事が摂れない時、発熱時などは注意が必要
(フィネレノン) 腎臓と心血管の保護を強化する 2型糖尿病を合併したCKDで、適応を満たす方 高カリウム血症に注意。定期採血が必要

※薬剤は、腎機能、尿アルブミン、糖尿病の有無、血圧、カリウム値、合併症を総合して判断します。

SGLT2阻害薬について

SGLT2阻害薬は、もともとは糖尿病治療薬として使われてきましたが、現在では腎臓を守る薬としての位置づけが非常に大きくなっています。日本腎臓学会のrecommendationでは、糖尿病合併・非合併にかかわらずCKD患者で積極的に使用を検討するとされています。KDIGO 2024でも、eGFR 20以上かつ尿ACR 200 mg/g以上のCKD、または心不全を伴うCKDではSGLT2阻害薬の治療を推奨しています。

一方で、使い始めにeGFRが一時的に下がることがあり、また、発熱、下痢、嘔吐、絶食、手術前後などでは休薬が必要になることがあります。患者さんご自身の体調に応じて、医師と相談しながら安全に使うことが大切です。

フィネレノンについて

フィネレノンは、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に使われるお薬です。すべてのCKD患者さんが対象になるわけではなく、糖尿病があり、腎機能や尿アルブミンの状態をみながら適応を判断する薬です。日本糖尿病学会のガイドラインでも、フィネレノンは2型糖尿病とCKDを有する患者で腎予後改善に有効であったことが紹介されています。

この薬で特に大切なのは、高カリウム血症への注意です。PMDAの適正使用ガイドでは、原則として開始前に血清カリウムを確認し、投与開始または増量から4週間後、その後も定期的に血清カリウム値とeGFRを測定することが示されています。血清カリウムが高い方や腎機能がかなり低下している方では、慎重な判断が必要です。

患者さん向けに簡単にいうと、フィネレノンは
「2型糖尿病があり、腎臓や心血管のリスクをさらに下げたい方で検討される薬」
です。ただし、採血で安全を確認しながら使う薬であるため、適切に導入することが大切です。


日常生活で気をつけたいこと

CKDでは、日常生活の積み重ねが治療の土台になります。以下の点を意識することが大切です。

  • 家庭血圧を測る
  • 塩分を控える
  • 禁煙する
  • 体重を増やしすぎない
  • 糖尿病がある方は血糖管理を続ける
  • 市販の痛み止めを長期間自己判断で使わない
  • サプリメントや健康食品も自己判断で続けない
  • 発熱や下痢、食事が摂れない時は薬の調整が必要なことがある
  • 定期的に尿検査と血液検査を受ける

特に市販薬の一部、たとえばNSAIDs(痛み止め)は腎機能に負担をかけることがあります。CKDの方では、「市販薬だから安全」とは限らないため、気になる薬があればご相談ください。


こんな方はご相談ください

  • 健診でクレアチニン高値eGFR低下を指摘された方
  • 尿たんぱく尿潜血尿アルブミンを指摘された方
  • 糖尿病や高血圧があり、腎臓の状態を一度確認したい方
  • 足のむくみ、夜間尿、だるさが気になる方
  • 腎機能が少しずつ悪くなっていると言われた方

症状がなくても、検査異常があれば受診の価値があります。 CKDは早期対応が大切です。


当院でできること

当院では、健診異常の段階から、尿検査・血液検査をもとにCKDの早期評価を行っています。高血圧、糖尿病、脂質異常症、心不全など、腎機能と関わりの深い病気を総合的に診ることができるのが当院の特徴です。循環器専門医の立場から、心臓と腎臓の関係(心腎連関)も意識しながら診療を行い、必要に応じて専門医療機関とも連携いたします。

健診で
「尿たんぱくが出た」
「クレアチニンが高いと言われた」
「eGFRが下がっている」
という方は、お気軽にご相談ください。


よくあるご質問

Q. CKDは治りますか?

一度低下した腎機能が完全に元に戻るとは限りません。ただし、適切な治療を続けることで、進行を遅らせたり、合併症を防いだりすることは十分期待できます。

Q. 尿たんぱくが少し出ただけでも受診した方がよいですか?

はい。特に糖尿病や高血圧がある方では、少量の尿アルブミン増加が、将来の腎機能低下のサインになることがあります。早めの確認に意味があります。

Q. フィネレノンは誰でも飲めますか?

いいえ。フィネレノンは、2型糖尿病を合併するCKDで検討される薬です。開始前後にカリウム値や腎機能の確認が必要で、すべてのCKD患者さんに使う薬ではありません。

 

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