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心不全

心不全とは?

「すぐ息が切れる」「足がむくんで靴が入らない」「夜になると咳き込む」──このような症状がある方は、心不全の可能性があります。

心不全とは、心臓の働きが弱くなり、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態を指します。心臓のポンプ機能が低下することで、息切れやむくみ、疲れやすさなどの症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
進行すると入退院を繰り返すようになり、命に関わることもあるため、早期発見と適切な治療が重要です。

当院では、日本循環器学会認定の循環器専門医が診療を行っており、心不全の早期発見から慢性管理まで、患者さん一人ひとりに合わせたきめ細かい治療を提供しています。

高齢化とともに増える「心不全パンデミック」

近年、日本では高齢化の進行に伴い、心不全の患者数が急増しています。2020年時点で約120万人が心不全を抱えていると推定されており、今後も増加が予測されています。

心不全の主な原因

心不全は、さまざまな心臓疾患や生活習慣病が原因となって発症します。

  • 虚血性心疾患(心筋梗塞など)
  • 高血圧
  • 心臓弁膜症
  • 心筋症(拡張型・肥大型など)
  • 不整脈
  • 糖尿病・腎臓病・肥満などの生活習慣病

これらの疾患が心臓の構造や機能に異常をきたし、ポンプ機能が低下することで心不全が起こります。

心不全の症状について

心不全の症状には以下のようなものが見られます。以下のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 1階分の階段移動や坂道で息切れがする

  • 少し動いただけで疲れやすい

  • 夜中や横になると咳が出る

  • 足やすね、顔にむくみが出る

  • 食欲がなくなる、体重が急に増える

  • 動悸がする、胸がドキドキする

  • 寝ている間に息苦しくて目が覚める

初期は「年齢のせいかな」「運動不足かな」と思われがちですが、実は心臓のサインかもしれません。これらの症状は、心臓が血液を十分に送り出せないことで、肺や全身に水分がたまり、酸素供給が不足するために起こります。

心不全の病気の種類について

心不全は、大きく分けて次の2つのタイプがあります。

収縮不全(拡張型心不全)

心臓の収縮力(ポンプ力)が低下している状態で、主に心筋梗塞や拡張型心筋症などが原因になります。

拡張不全(拡張障害型)

心臓が硬くなって、十分に拡がらず血液を取り込めない状態。高齢の方や高血圧の方に多くみられます。

また、以下のように「急性」と「慢性」にも分類されます。

分類 特徴
急性心不全

突然症状が悪化し、呼吸困難などを起こす。
入院治療が必要になることも

慢性心不全 徐々に悪化し、症状が波のように繰り返す。
適切な治療でコントロールが可能

心不全は「治る病気」というより、「うまくつきあっていく病気」として捉えることが大切です。

心不全の検査方法

心不全の診断には、症状の確認に加えて、心臓の機能や構造を調べる検査が必要です。

主な検査項目

検査名

内容

心電図

不整脈や心筋梗塞の有無を確認

胸部X線

心臓の大きさや肺のうっ血を評価

心エコー(超音波)

心臓の動きや弁の状態、駆出率(LVEF)を測定

血液検査(BNP/NT-proBNP)

心臓への負担を数値で評価

心臓CT・MRI

詳細な構造や血流の評価

心臓カテーテル検査

血管の狭窄や圧力を直接測定(必要時)

特にBNPやNT-proBNPは、心不全の診断や重症度の評価に有用で、ガイドラインでも重要な指標とされています。当院では来院して15分程度でNT-proBNPの測定が行える体制を整えております。

心不全のステージ分類と治療法について

心不全の治療において、心不全のステージ分類は、病気の進行度や治療方針を決めるうえで非常に重要です。心不全のステージにはACCF/AHA(米国心臓病学会財団/米国心臓協会)によるステージ分類などがあります。心不全の治療は、原因疾患の改善と、心臓の負担を減らすことが中心です。症状の進行度に応じて、薬物療法・生活習慣の改善・手術などが組み合わされます。


 心不全ステージ分類(ACCF/AHA)

この分類は、心不全の進行に応じてA〜Dの4段階に分けられます。特徴は、症状が出る前の段階(A・B)も含まれていることです。

ステージ 状態 説明
A 危険因子あり・器質的異常なし 高血圧、糖尿病、肥満、冠動脈疾患などがあるが、心臓の構造異常や症状はない
B 器質的異常あり・症状なし 心筋梗塞後、左室肥大、弁膜症などの構造的異常があるが、心不全症状はない
C 器質的異常あり・症状あり 息切れ、むくみなどの心不全症状が出現。急性増悪と慢性期を繰り返す
D 難治性末期心不全 治療を行っても症状が改善せず、日常生活が著しく制限される状態。緩和ケアの対象となることもある

NYHA心機能分類との違い

NYHA分類は、自覚症状と身体活動の制限度に基づく重症度評価で、ステージC・Dの患者に対して用いられます

NYHA分類 状態 説明
I度 無症状 通常の活動で症状なし
II度 軽度制限 階段や坂道で息切れなどの症状が出るが、安静時は無症状
III度 中等度制限 平地歩行など軽い活動でも症状が出る
IV度 重度制限 安静時にも症状があり、ほとんどの活動が困難

ステージ分類の活用ポイント

  • ステージA・B:生活習慣の改善や危険因子の管理が中心(予防的アプローチ)
  • ステージC:薬物療法や心臓リハビリテーションなどで症状コントロール
  • ステージD:高度な治療(補助人工心臓、移植、緩和ケアなど)を検討

心不全の治療

薬物療法(ステージC・D)

薬剤名

目的

SGLT2阻害薬

心不全の予防・再入院の抑制(糖尿病がなくても有効)

β遮断薬

心拍数を抑え、心臓の負担を軽減

ACE阻害薬/ARB/ARNI

血管を広げ、心臓の負担を減らす

MRA(利尿作用)

体内の水分を調整し、むくみを改善

利尿薬

うっ血症状の緩和

非薬物療法

  • 心臓リハビリテーション:運動療法で体力と心機能を改善
  • ペースメーカー・除細動器:不整脈の予防や心臓の同期を調整
  • 補助人工心臓・心臓移植:重症例に対する治療選択肢

生活習慣の改善

  • 塩分・水分の制限
  • 禁煙・節酒
  • 適度な運動
  • 定期的な通院と服薬管理

必要に応じた連携医療

入院が必要な方や原因に対する手術やペースメーカーが必要な場合は、適切なタイミングで循環器専門の病院と連携し、治療につなげます。

心不全についてのよくある質問

Q1. 心不全は治りますか?
A1. 原因にもよりますが、完治というより「症状をうまくコントロールして再発を防ぐ」ことが治療の目的です。適切な治療を続けることで、日常生活は問題なく送れる方も多くいらっしゃいます。

Q2. 心不全は急に悪くなることがありますか?
A2. はい。塩分の摂りすぎ、感染症、飲み薬の中断などがきっかけで急に悪化することがあります。日々の体調変化を見逃さないことが大切です。

Q3. 家でできる心不全の予防はありますか?
A3. 減塩、適度な運動、禁煙、体重の管理などが効果的です。特に高血圧や糖尿病がある方は、心不全を予防するうえで重要なポイントになります。

Q4. 動悸が気になりますが、心不全ですか?
A4. 動悸は不整脈のサインかもしれません。心不全に関係することもあるため、一度検査をおすすめします。

最後に

心不全は、ある日突然発症するのではなく、じわじわ進行する病気です。言い換えれば、心不全は「一度なったら終わり」ではなく、「これからうまくつき合っていく病気」です。症状が出る前の段階からの予防や、早期発見による治療介入が、重症化を防ぐ最大のチャンスです。最近では、新しい薬や治療法の登場によって、心不全でも十分に日常生活を送ることができるようになっています。「最近、息切れが気になる」「むくみが続いている」など、気になる症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
当院では、心不全の早期発見・予防・治療に力を入れています。循環器専門医としての経験を活かしながら、一人ひとりの生活や背景に寄り添った治療を心がけています。少しでも気になる症状があれば、無理せずご相談ください。心臓の健康を一緒に守っていきましょう。

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